コラム

犬の皮膚炎とは? 症状・原因・治し方・治療法を獣医師目線で解説

愛犬が体をしきりに掻いている、皮膚が赤くなっている、フケや脱毛が増えてきた——こうした「犬 皮膚炎」のお悩みは、動物病院への来院理由の中でも特に多いもののひとつです。皮膚炎は原因がひとつとは限らず、見た目もさまざまなため、飼い主さまだけで判断するのは簡単ではありません。

本記事では、犬の皮膚炎について、症状の特徴や写真で確認できるチェックポイント、原因の種類、自宅でできる治し方、動物病院での治療法まで、獣医師監修のもと詳しく解説します。気になる症状がある場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに当院までご相談ください。

犬の皮膚炎とは?

犬の皮膚炎とは、皮膚に炎症が起こっている状態の総称で、赤み・かゆみ・脱毛・フケなど、さまざまな症状として現れます。「皮膚病」が皮膚トラブル全般を指す言葉であるのに対し、「皮膚炎」はその中でも炎症を伴うものを指すことが多く、原因によって症状の出方や必要な治療が大きく異なるのが特徴です。

犬は被毛に覆われている分、人よりも皮膚が薄くデリケートな構造をしています。そのため外部からの刺激やアレルゲン、細菌・真菌などの影響を受けやすく、皮膚炎は犬にとって非常に身近な病気だといえます。一度皮膚のバリア機能が低下すると、そこからさらに菌が増えたり刺激を受けやすくなったりして、症状が悪化する悪循環に陥ることも少なくありません。

実際に、皮膚に何らかの悩みを抱えている愛犬は全体の約8割ともいわれており、当院(ふじわら動物病院)でも皮膚科は日々多くの飼い主さまからご相談をいただく診療科のひとつです。「うちの子だけではないか」と不安に思う必要はありません。まずは症状を正しく知ることから始めましょう。

犬の皮膚炎の症状|まずはセルフチェック

以下のような様子が見られたら、皮膚炎のサインかもしれません。日頃から愛犬の様子を観察し、当てはまる項目がないか確認してみましょう。

  • 体を頻繁に掻く、舐める、噛む
  • 床や壁、家具、じゅうたんなどに体をこすりつける
  • 皮膚が赤くなっている(発赤)
  • 毛が薄くなった、部分的に抜けている(脱毛)
  • フケが増えた、べたついたフケが出る
  • 皮膚や被毛がベタベタする、独特のにおいがする
  • ブツブツとした発疹やできものがある
  • 掻き壊してかさぶたができている
  • 耳を気にする、耳が臭う(外耳炎の併発)

症状が出やすい部位は原因によって異なりますが、顔まわり、耳、脇の下、内股、指の間、背中、しっぽの付け根などが代表的です。かゆみを伴う皮膚炎では、犬自身が掻くのを我慢できずに患部を掻き壊してしまい、症状がどんどん悪化していくケースが多く見られます。

【写真でチェック】犬の皮膚炎で見られる代表的な症状

実際の皮膚炎の見た目は、原因や進行度によって大きく異なります。以下に代表的な症状の特徴をまとめました。院内の症例写真を掲載する場合は、各項目に画像を挿入してご活用ください。

発赤・かゆみを伴うアトピー性皮膚炎の患部

  • 皮膚が赤くなり、強いかゆみを伴う
  • 顔まわりや足先、脇・内股に出やすい
  • 慢性化すると皮膚が黒ずみ、ゴワゴワと厚くなる(苔癬化)

膿皮症による発疹・膿疱

  • ニキビのようなブツブツとした発疹(膿疱)
  • 左右対称に出やすく、黄色っぽいフケを伴うこともある
  • 背中や腹部に多い

マラセチア性皮膚炎によるベタつき

  • 皮膚や被毛のベタつき、独特の酸っぱいにおい
  • 耳のまわりや指の間、脇・内股に出やすい
  • • 赤みやかゆみを伴うことが多い

写真だけで正確な診断をすることは難しく、似たような見た目でも原因が異なるケースが多くあります。「うちの子の症状がどれに当てはまるか分からない」という場合は、当院で直接拝見しますので、お気軽にご来院ください。

犬の皮膚炎の主な原因

犬の皮膚炎は、ひとつの原因だけで起こることは少なく、複数の要因が重なって発症・悪化するケースがほとんどです。代表的な原因を紹介します。

①アレルギー

花粉やハウスダストなどが原因の「アトピー性皮膚炎」、特定の食材が原因の「食物アレルギー」、ノミの唾液が原因の「ノミアレルギー性皮膚炎」などがあります。アトピー性皮膚炎は、遺伝的にアレルギー体質を持つ犬種は発症しやすく、3歳以下の若齢期から症状が出ることも多いです。食物アレルギー、ノミアレルギー性皮膚炎は成犬、高齢件になってからでも発症することがあります。

②細菌・真菌感染

皮膚の常在菌であるブドウ球菌が増殖する「膿皮症」、カビの一種であるマラセチアが増える「マラセチア性皮膚炎」、人にもうつることがある「皮膚糸状菌症」などが代表的です。皮膚のバリア機能が低下すると、これらの菌が異常に増殖しやすくなります。

③寄生虫

ヒゼンダニによる「疥癬(かいせん)」、毛穴に寄生する「ニキビダニ症(毛包虫症)」のほか、ノミやマダニの寄生も皮膚炎の原因になります。特に疥癬は感染力が強く、人にもうつることがあるため注意が必要です。

④内分泌疾患

甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などのホルモン異常も、左右対称の脱毛や皮膚の色素沈着といった皮膚症状を引き起こすことがあります。この場合、かゆみを伴わないことも多いのが特徴です。

⑤環境・生活習慣

高温多湿や乾燥、ストレス、シャンプーのしすぎ、栄養バランスの偏りなども皮膚のバリア機能を低下させ、皮膚炎の発症・悪化の引き金になります。季節の変わり目に症状が悪化しやすいのはこのためです。

犬の皮膚炎の治し方|自宅でできるケア

動物病院での治療と並行して自宅でのケアを行うことで、症状の改善や再発予防が期待できます。ただし、自己判断のケアだけに頼らず、必ず獣医師の指示のもとで行うようにしましょう。

適切なシャンプーで皮膚を清潔に保つ

皮膚科用のシャンプーを使い、獣医師に指示された頻度・方法で洗ってあげましょう。洗いすぎはかえって皮膚の乾燥を招き、症状を悪化させることがあるため注意が必要です。

保湿ケア

皮膚のバリア機能を保つために、保湿剤やスキンケア用品を活用するのも効果的です。特に空気が乾燥する季節は、入念な保湿を心がけましょう。

室内環境を整える

温度・湿度を適切に管理し、こまめな掃除でハウスダストやノミ・ダニを減らしましょう。空気清浄機の活用も有効です。

食事・栄養管理

皮膚や被毛の健康維持に配慮したフードを選び、必要に応じてサプリメントを取り入れることも、皮膚炎の改善・予防につながります。

ストレスを減らす

ストレスから体を舐め続けてしまう犬もいます。コミュニケーションの時間を増やし、留守番中も過ごしやすい環境を整えてあげましょう。

動物病院での犬の皮膚炎の治療法

皮膚炎の治療は原因によって大きく異なるため、まずは正確な診断が重要です。当院では問診・視診に加え、必要に応じて以下のような検査を行い、原因を特定したうえで最適な治療法をご提案しています。

主な検査方法

  • スタンプスメア検査(皮膚表面の細菌・マラセチアの確認)
  • 抜毛検査・掻爬検査(ニキビダニや疥癬の確認)
  • 皮膚糸状菌培養検査
  • アレルギー検査・血液検査(内分泌疾患の確認)

主な治療法

  • 薬物療法:ステロイドやアポキルなどのかゆみ止め、抗生物質、抗真菌薬を症状・原因に合わせて使用
  • 駆虫治療:ノミ・ダニ・ニキビダニなど寄生虫に対する駆虫薬の投与
  • 薬用シャンプー療法:院内処方のシャンプーによるスキンケア
  • 食事療法:食物アレルギーが疑われる場合の除去食試験
  • 体質改善:サプリメントや腸内環境ケアによるアプローチ

アトピー性皮膚炎など体質が関係する場合は完治が難しく、症状をコントロールしながら生涯付き合っていく必要があるケースも少なくありません。しかし、適切な治療を継続することで、かゆみのない快適な生活を送れるようになる愛犬がほとんどです。自己判断で薬をやめてしまうと再発・悪化することがあるため、必ず獣医師の指示に従って治療を続けましょう。

当院(ふじわら動物病院)の皮膚科診療について

当院では、皮膚の症状の裏に耳や目、内分泌などの他の問題が隠れていないかも含めて総合的に診察しています。

  • ステロイドやアポキルなど西洋医学的な治療を基本としながら、なかなか改善しない慢性的な皮膚炎に対しては、自然治癒力を高める統合医療的なアプローチもあわせてご提案できます
  • 西洋医学的な治療だけではうまくいかず行き詰まりを感じている飼い主さまも、お気軽にご相談ください
  • 一方的な治療の押し付けは行わず、愛犬の生活状況・健康状況・飼い主さまのご負担(費用や時間)を踏まえたうえで、無理のない治療プランをご提案します
  • 症状が出てから対応するだけでなく、予防接種や定期健康検査による「ウェルネスケア」を通じて、皮膚炎の早期発見・悪化予防にも力を入れています

皮膚炎になりやすい犬種・年齢

遺伝的に皮膚炎を起こしやすい犬種として、柴犬、フレンチブルドッグ、パグ、トイプードル、シーズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、アメリカン・コッカー・スパニエルなどが知られています。

また、3歳以下の若齢期に発症することが多いアトピー性皮膚炎に対し、中高齢以降で発症した場合は内分泌疾患や免疫力の低下が関係している可能性もあります。愛犬の犬種や年齢に応じて、日頃から皮膚の状態をチェックする習慣をつけましょう。

こんな症状が見られたらすぐに動物病院へ

以下のような場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 掻き壊して出血している
  • 短期間で急激に症状が悪化している
  • 元気や食欲がない
  • 広範囲に脱毛や発疹が広がっている
  • 強いにおいがする

皮膚炎は放置すると悪化しやすく、治療期間が長引く原因にもなります。「様子を見よう」と自己判断せず、気になる症状があれば早めにご相談ください。

犬の皮膚炎に関するよくある質問

Q. 犬の皮膚炎は自然に治りますか?

A. 軽度な刺激性皮膚炎などは自然に改善するケースもありますが、アレルギー性や感染性の皮膚炎は自然治癒が難しく、悪化することも多いため、早めの受診をおすすめします。

Q. 犬の皮膚炎は人にうつりますか?

A. 皮膚糸状菌症や疥癬など、一部の皮膚炎は人にも感染する可能性があります。気になる症状がある場合は、当院と合わせて皮膚科医にもご相談ください。

Q. 市販の薬やシャンプーを使っても良いですか?

A. 人用の薬は犬に中毒症状を引き起こすことがあるため使用は避けましょう。市販の犬用シャンプーも症状によっては刺激になり悪化させる場合があるため、まずは獣医師にご相談のうえで使用することをおすすめします。

まとめ

犬の皮膚炎は、アレルギーや細菌・真菌感染、寄生虫、内分泌疾患などさまざまな原因によって起こり、症状や治し方も原因によって異なります。自己判断でのケアだけでは改善が難しいケースも多いため、気になる症状が見られたら早めに動物病院を受診することが大切です。

当院(ふじわら動物病院)では、皮膚炎でお悩みの愛犬に対して、丁寧な検査と原因に応じた治療をご提案しています。「愛犬の皮膚が気になる」という方は、お気軽に当院までご相談ください。