
「血尿が治ったと思ったら、また出てきた」「何度もトイレに行くのに、少ししかおしっこが出ない」。猫が膀胱炎を繰り返す場合、特発性膀胱炎の可能性があります。特発性膀胱炎は、症状への治療だけでなく、日々の生活環境を見直すことが再発予防のカギになる病気です。
ただし、頻尿や血尿の原因は一つではありません。尿路結石や細菌感染でも同じような症状が出るため、「前回と同じ膀胱炎だろう」と自己判断せず、まずはおしっこがきちんと出ているかを確認しましょう。
この記事では、猫が膀胱炎を繰り返す原因や見逃したくない緊急サイン、病院での検査・治療、家庭でできる再発予防のポイントを解説します。
監修:【藤原光宏】(ふじわら動物病院 院長/獣医師)
〇猫の特発性膀胱炎とは?
猫特発性膀胱炎は、尿路結石や細菌感染など、ほかの原因が検査で見つからない場合に診断される膀胱炎です。「特発性」とは「はっきりした原因を特定できない」という意味です。
頻尿や血尿、排尿時の痛みなどが現れ、多くは1週間前後で治まるとされています。しかし、いったん症状が落ち着いても、ストレスなどをきっかけに再発しやすいのが特徴です。
特発性膀胱炎は細菌が原因ではないため、すべての猫に抗菌薬が必要になるわけではありません。若い猫から中年の猫に見られる下部尿路疾患(膀胱や尿道の病気)では、最も多い原因の一つとされています。
〇猫が膀胱炎を繰り返す主な原因
猫の膀胱炎を繰り返す原因には、主に次のようなものがあります。原因によって治療法が大きく異なるため、検査で見極めることが大切です。
| 原因 | 特徴 |
| 特発性膀胱炎 | 検査でほかの原因が見つからない膀胱炎。ストレスが再発のきっかけになりやすい |
| 尿石症(尿路結石) | ストルバイトやシュウ酸カルシウムなどの結石が膀胱や尿道にできる。ストルバイトは食事療法で溶けることがあるが、シュウ酸カルシウムは溶けにくい |
| 尿道栓子 | 結晶や粘液、血液、細胞などが固まったもの。 尿道が細いオス猫で、詰まりの原因になりやすい |
| 細菌性膀胱炎 | 若い猫では少ないが、高齢の猫や、腎臓病・糖尿病などの持病がある猫で増える |
| その他 | まれに、膀胱の腫瘍やポリープなどが隠れていることもある |
〇特発性膀胱炎とストレスの関係
特発性膀胱炎の発症には、ストレスに対する体の反応や神経系、膀胱の粘膜の状態などが複雑に関係すると考えられています。引っ越しや模様替え、来客、工事などの騒音、同居猫との関係、トイレの場所や砂の変更などが負担になる場合があります。
猫によって苦手なものは異なります。症状が出る前の生活の変化を振り返り、その子にとって何がストレスになっているかを考えることが、再発予防の第一歩です。
〇膀胱炎を繰り返しやすい猫の特徴
特発性膀胱炎は、次のような猫で起こりやすいとされています。
- 若い猫から中年の猫
- 肥満気味の猫
- 完全室内飼いで、運動量が少ない猫
- 多頭飼育で、ほかの猫との関係に緊張がある猫
- ドライフード中心で、あまり水を飲まない猫
- 環境の変化に敏感な、神経質な性格の猫
当てはまるからといって必ず発症するわけではありません。ただ、当てはまる項目が多い場合は、日ごろから排尿の様子を気にかけておくと安心です。
〇見逃したくない症状と緊急サイン
次のような様子が見られたら、膀胱や尿道にトラブルが起きている可能性があります。
- 何度もトイレに行く
- 少量ずつしか尿が出ない
- 尿が赤い、ピンク色っぽい(血尿)
- 排尿時に鳴く、長い時間力む
- トイレ以外の場所で排尿する
- 陰部を何度もなめる
これらの症状は、特発性膀胱炎だけでなく尿路結石や細菌性膀胱炎でも見られます。同じ症状でも原因が違えば治療も変わるため、繰り返している場合も、そのつど受診して確認しましょう。
〇すぐに受診すべき緊急サイン
次のような場合は、尿道閉塞(尿道が詰まって尿が出ない状態)の可能性があります。
- トイレで力んでいるのに、尿がまったく、またはほとんど出ない
- 半日以上、おしっこが出ていない(トイレの砂に尿の固まりがない)
- 元気や食欲がない、吐く、ぐったりしている
尿道閉塞は、尿道が細いオス猫で起こりやすい状態です。尿が出ない状態が続くと急性腎障害などを起こし、命に関わります。様子を見ずに、直ちに受診してください。診療時間外は、救急動物病院に相談しましょう。

〇特発性膀胱炎の検査と治療
検査の流れ
診察では、排尿の回数や尿量、症状が出た時期、これまでの経過などを確認し、尿検査を行います。必要に応じて超音波検査やレントゲン検査、尿培養検査(細菌がいるかを調べる検査)などを組み合わせ、結石や細菌感染、腫瘍といった別の原因がないかを調べます。特発性膀胱炎は、これらの原因が見つからなかったときに診断されます。
治療方法
治療では、まず痛みをやわらげることを優先します。そのうえで、猫の状態に合わせて薬や食事療法、生活環境の改善を組み合わせて検討します。検査で細菌感染が確認された場合は抗菌薬を使い、結石がある場合は結石の種類に合わせた治療を行います。当院では、メンタルケアや膀胱ケアのために、漢方薬やホモトキシコロジー、サプリメントを使って治療することもあります。
膀胱炎を繰り返している場合は、症状が治まった後も、再発を防ぐための対策を続けることが重要です。
療法食はいつまで続ける?
特発性膀胱炎や尿石症では、泌尿器の健康に配慮した療法食をおすすめすることがあります。特にウェットタイプの療法食は水分を多く摂れるため、特発性膀胱炎の再発が減ったという報告があります。
療法食を続ける期間は、原因や猫の状態によって異なります。症状が治まったからといって自己判断でやめたり、一般のフードやおやつと混ぜたりすると、十分な効果が得られないことがあります。切り替えや中止は、必ず獣医師と相談して決めましょう。
受診前に準備しておくと役立つこと
- 排尿の様子のメモ(いつから、1日に何回トイレに行くか、尿の色など)
- トイレで排尿している様子の動画
- 最近の生活の変化(引っ越し、来客、フードやトイレ砂の変更など)
- 採尿できる場合は、尿
尿は時間が経つと状態が変わり、正確に検査できなくなることがあります。採尿した場合はできるだけ早く持参し、すぐに持参できないときは冷蔵庫で保管してください。システムトイレのシートに染み込んだ尿や、砂に付いた尿は検査に使えないことがあります。採尿の方法がわからない場合は、事前にご相談ください。
〇家庭でできる再発予防の5つのポイント
特発性膀胱炎の再発予防では、トイレ、水、食事、休む場所、遊びなど、猫の生活環境を多面的に整えることが大切です。
- トイレを快適にする:トイレは「猫の頭数+1個」を目安に、人通りが少なく静かな場所に置きます。排泄物はこまめに取り除き、清潔に保ちましょう。大きさは猫の体長の1.5倍程度が目安です。
- 水を飲みやすくする:家の中に水飲み場を複数つくり、いつでも新鮮な水を飲めるようにします。器の素材や形、流れる水が出る給水器など、その子が好むものを探してみましょう。
- 食事から水分を摂る:ウェットフードを取り入れるなど、食事から水分摂取を増やす工夫を獣医師と相談しましょう。
- 安心して休める場所をつくる:隠れられる場所や、キャットタワーなどの高い場所を用意し、猫が落ち着いて休める環境を整えます。
- 遊びと縄張りに配慮する:短時間でもよいので、毎日遊ぶ時間をつくりましょう。多頭飼育では、食事やトイレ、寝床の場所を猫ごとに分けると、猫同士の緊張を減らせます。
こうした生活環境の多面的な改善は「MEMO(Multimodal Environmental Modification:多面的環境改善)」と呼ばれ、特発性膀胱炎の再発予防で重視されています。ただし、急な変化はそれ自体が猫のストレスになることがあります。一度にすべてを変えず、猫の様子を見ながら少しずつ取り入れましょう。
〇猫の膀胱炎に関するよくある質問
Q. 猫の膀胱炎は自然に治りますか?
A. 特発性膀胱炎は、1週間前後で症状が治まることが多いとされています。ただし、尿路結石や細菌感染、尿道閉塞でも同じような症状が出るため、自然に治るかどうかを家庭で判断するのは危険です。症状が見られたら受診し、原因を確認しましょう。
Q. ストレスだけで膀胱炎になるのですか?
A. ストレスは特発性膀胱炎の発症や再発の大きなきっかけの一つと考えられていますが、それだけが原因ではありません。体質や膀胱の状態、水分摂取量なども関係します。
Q. オス猫とメス猫で、なりやすさに違いはありますか?
A. 特発性膀胱炎そのものは、オス・メスどちらにも起こります。ただし、オス猫は尿道が細く長いため尿道閉塞を起こしやすく、より注意が必要です。
Q. 症状が治まった後も通院は必要ですか?
A. 膀胱炎を繰り返している場合は、症状が治まった後も尿検査などで状態を確認し、再発予防の対策が合っているかを見直すことをおすすめします。通院の頻度は、猫の状態に合わせて獣医師とご相談ください。
〇猫の膀胱炎を繰り返すお悩みは、新座市のふじわら動物病院へ
ふじわら動物病院(埼玉県新座市)では、尿検査や画像検査などで原因を確認し、その子の状態や生活環境に合わせた診療を大切にしています。志木市・朝霞市周辺で、猫の血尿や頻尿、繰り返す膀胱炎にお困りの方は、当院の腎・泌尿器科へご相談ください。
遠方で来院が難しい方には、オンライン相談も行っております。ただし、おしっこが出ていない、ぐったりしているなど緊急性が高い場合は、オンライン相談ではなく、お近くの動物病院を直ちに受診してください。
参考文献
- Buffington CA, Westropp JL, Chew DJ, Bolus RR. Clinical evaluation of multimodal environmental modification (MEMO) in the management of cats with idiopathic cystitis. J Feline Med Surg. 2006;8(4):261-268.
- Markwell PJ, Buffington CA, Chew DJ, et al. Clinical evaluation of commercially available urinary acidification diets in the management of idiopathic cystitis in cats. J Am Vet Med Assoc. 1999;214(3):361-365.